ケルーガファイアーズを使い倒せ
2020年4月27日 デッキ考察(スタンダード)早いものでイコリア発売から1週間、どこもかしこも相棒だらけとなったこのゲーム。MTG3.0と呼ばれるのもやむなしかなといったところ。
さて、今回は久々デッキ考察です。
元々ジェスカイファイアーズはELDリリース後期からここに至るまでずーっと回してるデッキですし、「ケルーガ・ファイアーズ」として現環境のトップに躍り出たこのタイミングで一度自分の思考をデトックスしておきたいなとおもっていたところに某御仁からのリクエストもござーまして今回記事を一筆しようと思い立った次第です。気が付いたら累計500マッチ以上ファイアーズ回してて草。
色々語るべきところはあるんですが、デッキの性質とか構築そのものについては世に山ほど上位互換的記事が出回っていることでしょうからイコリア発売以降の新しい部分を中心に語っていきます。
まずは直近で勝ってる中でも比較的オーソドックスなレシピを引っ張ってくるとこからいきましょうかね。
Standard Super Qualifier - #12138027
プレイヤー:_goblinlackey
成績:1st Place
開催日:2020/04/22
メインボード(60)
土地(29)
2《ヴァントレス城》
3《寓話の小道》
4《神聖なる泉》
2《島》
2《山》
1《平地》
4《ラウグリンのトライオーム》
3《聖なる鋳造所》
4《サヴァイのトライオーム》
4《蒸気孔》
クリーチャー(15)
4《砕骨の巨人》
4《炎の騎兵》
3《帰還した王、ケンリス》
4《予見のスフィンクス》
呪文(16)
2《古き道のナーセット》
4《時を解す者、テフェリー》
4《轟音のクラリオン》
2《エルズペス、死に打ち勝つ》
4《創案の火》
サイドボード(15)
2《エルズペス、死に打ち勝つ》
1《炎の一掃》
1《巨智、ケルーガ》(相棒指定)
4《軍勢の戦親分》
4《神秘の論争》
2《覆いを割く者、ナーセット》
1《嵐の怒り》
赤文字はイコリアからの新規ポイント。
以下別個に項目を設けます。
変化①:マナベースについて
マナベースについての変化は地味ながら大きな変更点。イコリアから新しくなったのは以下2点、それぞれについて少し説明しましょう。
Ⅰ.土地29~30枚がデフォルトに
《巨智、ケルーガ》が5マナ圏に確実に控えることになった都合、ファイアーズは今までと違い「土地」「《創案の火》」「踏み倒すスペル」のうち少なくとも最後者については別に引かなくても、ないし引きに行かなくてもよくなりました。ということでファイアーズというデッキが最も回避すべきはマナスクリューだ!とこれを回避する方向に構築が変化。今やファイアーズの土地枚数は29~30がデフォルトで、ついに30ランドの時代がやってきた次第。マジでMTG3.0。
Ⅱ.黒マナの採用
土地の枚数が増えたことで、土地のスロットそのものに余裕ができたことから、《沼》もしくは《サヴァイのトライオーム》を採用し黒マナ源を確保するのがトレンド。黒マナは《帰還した王、ケンリス》のリアニメイト能力起動に用います。
沼は《寓話の小道》から引っ張ってこれる分素引きした際邪魔になり、トライオームはタップインな関係で占術ランドの枠を食って採用する形になります。一長一短ですが、多数派はトライオーム採用型のようですね。
なお、ケンリスの能力で相手の墓地のクリーチャー選ぶと相手の場にリアニするんでお気をつけあそばせ?
変化②:《風の騎兵》、クビ
元々速攻がなく、青白コンの流行以来青系の低速デッキ御用達《覆いを割くもの、ナーセット》にいわされやすい点でもって、THB環境以降ファイアーズの生物の中では優先度が低くなりつつあった青騎兵君。
アドバンテージ的にも色拘束的にも優れておりサイズもほぼ互角、そのくせ初手に確実に存在するケルーガの登場がとどめの一撃となりあえなく解雇となりました。南無。
《エルズペス、死に打ち勝つ》や黒マナの採用に伴い、青騎兵のスロットは追加のケンリスに割かれています、デフォルトで3枚が主流。火を置いた状態では最も強いクリーチャーですし、リアニメイト能力で自身に疑似的に除去耐性を付けられる(除去に対応して、墓地の二枚目のケンリスへリアニメイト能力を起動する)のである程度の重ね引きにも目を瞑れるでしょう。《炎の騎兵》でも捨てられますし。
クリーチャースロットについても軽く個別解説しておきますか。
【必須枠】
・《砕骨の巨人》・・・ケルーガの縛りをすり抜ける数少ない2マナの行動。赤単やラクドスに強く、コントロールデッキ相手でも頼もしいクロック要員となり腐りにくい有能な巨人。確定で4枚、ランプやコントロールに対しては後述の《軍勢の戦親分》と挿げ替えましょう。
・《予見のスフィンクス》・・・RNAが産んだ驚異のかみ合い生物。火を探してそのまま4ターン目の行動になる上にクラリオンとのセット運用もこなす優秀なフライヤー。採用する場合は確定4枚。神秘の論争に引っ掛かりやすいのが玉に瑕。
・《炎の騎兵》・・・ドブンルートを支える屋台骨。チャンプブロックには弱いがその分打点効率がものすごい。ハンドにたまった土地をちぎり捨てながら自身のPIG火力も上げて一斉攻撃を仕掛ける様は圧巻、土地の増量でますます必須の存在になったといえるでしょう。確定4枚。
・《帰還した王、ケンリス》・・・火がでてれば最強の生物、でてない場合は大体6/5/5速攻。先に述べたようにリアニメイト能力が使いやすくなっています。
赤騎兵とは逆にトランプル付与によるチャンプブロック拒否が強力、加えてゲイン能力の存在からアグロ殺しの性能が高いシカキング。《轟音のクラリオン》と合わせ、ラクドスサクリファイス凋落の元凶といえるでしょう。3枚がデフォルト。
【選択枠】
・《厚かましい借り手》・・・生物スロットはほぼ上記4種で固定されているのだが、採用例のあるカード。砕骨の巨人と同じく、2マナの行動となりうるがいかんせんバウンスなので優先度は下がります。あちらと比べてコントロールなど低速デッキに強いです。
元々、部族がならず者ということあってTHB環境ではサイドボード後の《義賊》プランとのシナジー込みで採用されていた部分が強いため個人的には採用優先度は低め。
変化③:《古き道のナーセット》
ジェスカイファイアーズの新たな仲間、ジェスカイキック姉貴。+の(ドラゴニック)マナ加速こそデッキの性質上十全に活かせるわけではありませんが、なんといっても-能力が強力。カードを引き込みつつ、更に重ね引きしてしまった創案の火やケンリスを除去へ変換できるのは非常に優秀で、いままで触りにくかったPWにもそこそこ対抗できるようになりました。(6マナのカード入ってないのでニッサは落とせないことが多い、あいつ硬すぎる)
既に固定パーツとして2枚席を確保していますし、《見事な根本原理》まで採用するタイプもあるのでそちらへのアクセスを高めるカードとしても期待できるでしょう。
一応スペルのスロットについてもちょこちょこと。
【確定枠】
・《創案の火》・・・4枚。説明不要。
・《時を解す者、テフェリー》・・・苦手なカウンター系スペルへのアンチカードにして、ゲーム序盤から盤面に触りつつカードも引ける説明不要の超絶優秀ハゲ。アグロもミッドもコントロールもこれ一本、メインもサイド後も隅々までケアしてくれます。
イコリア環境ではさらにケルーガを使いまわしつつ、自身も3マナのパーマネントとしてドロー枚数を底上げするという邪悪な動きをするようになりました。どんだけ強いんだこのカード。(禁止になればよかったのに)確定4枚です。サイドアウトもほとんどしません。
・《古き道のナーセット》・・・先程述べた通り、ほぼほぼ-能力のためだけに入っています。「カードを引きつつ盤面に触る」がとにかく大事。1~2枚ほしいところ。
・《轟音のクラリオン》・・・すべてのアグロを殺すただ一つのラスゴ。序盤の一方的なアグロ攻勢を否定し、後引でも盤面一掃しつつ大型生物にライフリンクをもたせてライフレースを強引に逆転する対アグロにおけるキーカード。ケンリスのトランプル付与による突破力を高めたり、赤騎兵のPIG火力にも絆魂をつけたりと小技も多数。ラクドスサクリファイス・赤単などにとってはとにかく悪夢そのもので、それらのデッキが環境から数を減らす直接的な要因になっています。基本的には有利マッチを落とすことのないように4枚マスト。
もちろん対アグロ以外ではほぼ完全不要牌なので、サクリファイス系筆頭にしたアグロが減少傾向になれば採用枚数を見直す必要があるでしょう。
・《エルズペス、死に打ち勝つ》・・・すべてのミッドレンジを否定する万能追放除去。逆最古再誕どころの騒ぎではなかった白の英雄譚。通称ペス勝つ。
クラリオンとは逆に、ミッドレンジ以降のゲームレンジに対して非常に強い1枚。PWに触れるのがとにかく重要です。テフェリーで使いまわしたり、場に残ることからケルーガのパーマネントカウントに貢献したり、炎の騎兵をリアニして突然リーサル作ったり色々強力に噛みあいます。
特にミラーマッチではまともに創案の火に触れるカードがこれしかないので、テフェリー絡めてペス勝つ何回出せるかという勝負になりがち。まあミラーに限らずペス勝つ採用しているデッキ、要は青白含むミッドレンジ系同士ではペス勝つ
&テフェリーの枚数差が勝敗に大きく影響します。1~2枚のメイン採用に加えサイドに追加が用意されているというレシピも珍しくありません。実際サンプルに上げたレシピではメインサイドで合計4枚です。
アグロデッキが減ってきている現状、クラリオンを減量してこちらを増やすことも検討すべきでしょう。
【選択枠】
・《神秘の論争》・・・とりあえず青けりゃいれとけ、みたいな感覚でTHB環境でのランプデッキ流行を皮切に以後多くのデッキでメイン採用がみられるようになった青対策カウンター。
ケルーガファイアーズでもメインから採用される場合があります。本来ファイアーズの性質上カウンターとかみ合わせは良くないのですが、以前メインから《霊気の疾風》が入っていた枠にケルーガの縛りに反さないリアクションカード枠、という形で入っているイメージ。入ってるレシピでは1~2枚、サイドに追加の2~3枚が用意されていることが多いです。メインに入っていない場合は必ずサイドに4枚入っています。
色の流行具合はともあれ盤面に出た後でも触りうる霊気の疾風とは一概に比べることはできませんが、「腐れば炎の騎兵で捨てればいいや」があるのがファイアーズのいいところ。基本的には3T目まで、下手すると4T目までマグロで過ごすこともままあるこのデッキにとって、最速1T目から撃てるカウンターというのは便利なのは間違いありません。特に苦手なランプ・フラッシュ系へメインから対抗策をもてる、というのは重要。
逆に、アグロ系デッキへのリアクションスペルとしてはかなりの不要牌になります。この辺霊気の疾風と違って融通きかないところ。
変化④:サイドボード
最大の変化はもちろん、相棒指定の《巨智、ケルーガ》ですがそれに伴うサイドプランの変化には触れておくべきでしょう。
ファイアーズのサイドボードプランといえば、《厚かましい借り手》の項で少し触れたとおり《義賊》によるアグレッシブシフトが非常に有名でした。特に軽量除去をほとんど採用しない、あってもファイアーズ相手にはサイドアウトしがちな青緑X系のランプに対して有効なサイドプランですね。
これ以外にも、ランプに次いで苦手としているフラッシュ系・パーミッション系コントロールへの対抗策として《徴税人》もちょくちょくみられていたわけですが、これが義賊共々ケルーガの縛りによって採用できなくなっています。
厳密には採用できないわけではないんですが、採用すると相棒指定が無効になるためサイドボードを1枚損する形になります。一応相棒指定を無効にしてでも2マナ以下のスペルを強行採用するレシピも存在はしていますが、少数派ですね。
そういうわけで、現状ファイアーズのアグレッシブサイドボード要員は《軍勢の戦親分》に一任されています。ノンクリ気味のデッキに対してのクロックとしてはもちろん申し分ない性能ですしこれ一枚で勝つことも実際多々あるのですが、逆説的に言えばこれしかないことがわかっているので見え透いたサイドだということもできるでしょう。義賊と違ってペス勝つがあたってしまうのもややマイナスポイント。
サイドボードは結構好みが出るものなので、前2項のように個別にちょこちょこ説明いれるのは難しいですがまあ僕の把握している範囲で少しだけ。
【確定枠】
・《神秘の論争》・・・既に触れたとおり。ケルーガの縛りをすり抜けるフットワークの軽い優良カウンター。4枚マスト。
・《軍勢の戦親分》・・・既に触れたとおり。ゲームレンジを変えるために4枚マスト。たとえ本体が除去されても、トークンが数体残っていれば後から《炎の騎兵》のパンプでリーサルへの近道をつけてくれるのが優秀。
この時点でほぼ9枚のサイドボードが確定しているのがわかりやすいというか融通が利かないというか。
【選択枠】
メインボードと同じカードについては見たまんま増量なんで触れません。
・《炎の一掃》・・・追加のアグロ対策枠。大体の場合過剰サイドになりがちですが、インスタントであるのは意外と重要。具体的にはジェスカイサイクリングのインスタントタイミングでのトークン展開を咎めてブロッカーを排除したりとか。まあ割とピンポイント気味ですかね。アグロに絶対負けたくない人向け。
・《覆いを割くもの、ナーセット》・・・対青系ミッドレンジ枠。ランプやコントロールに対して常在型能力で牽制する、カンフーじゃない方のナーセット。ランプ系は《ハイドロイド混成体》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》にハンドアドバンテージを依存している面が強いので劇的に刺さります。維持さえできれば割と簡単に詰ませることが可能なのでそこにバリューを感じるならぜひ採用を。
他方、たっぷりの土地にクリーチャースペルも結構はいっているので自身のマイナス能力によるアドバンテージ獲得はサイド後のスペル増量を加味してもやや期待値薄め。空振りしても泣かない。
(非生物スペルいっぱい入れててもスカる?それもまたマジック)
ルールスサイクリングには効きそう見えてそこそこ軽量クロック出してくるのですぐに落ちちゃいます。サイドインする場合は能力を起動しないほうがいいでしょう。
・《嵐の怒り》/《時の一掃》/《空の粉砕》・・・ラスゴ枠。クラリオンでは倒せない屈強な生物を使ってくるようなミッドレンジに対して。嵐の怒りはPWにも当たるもののタフ4までが限度で自身のPWも巻き込む、時の一掃は自分の生物を保護できますが重い、空の粉砕は裏目少なく軽量ですがドローができたり相手にもさせたりとどれも一長一短。
クラリオンは効かないがラスゴがほしい、というマッチアップ自体僕には「グルールファイアーズ」ぐらいしか思いつかないのですがどうなんですかね実際。そこピンポイントになるのであればあんまり採用しなくても良さそうに感じています。
・《勾留代理人》・・・生きてるリング。トークンや置物を並べてくるルールスサイクリングや、ファイアーズミラーでも相手の創案の火や騎兵を追放できるのが便利な一枚。ジャイル―ダリアニに対しても、コンボ成立後に返しでまとめてふっとばすことができます。
ミラーはもちろんのこと、最近はあまり見なくなりましたがティムールアドベンチャーのような4枚採用が多いデッキに対してアドバンテージを稼げる可能性がそこそこあるので、その点に価値を見出す人はぜひ。クラリオンと噛み合わないが、炎の一掃とは噛み合う。《払拭の光》と違って生物なので、《炎の騎兵》によるパンプで打点貢献できる可能性があるのも○。除去が多いコントロールデッキ相手には入れてはいけません。
・《虚空の力戦》・・・墓地対枠。ケルーガの仕様上、《墓掘りの檻》が使えないのでこちらをとらざるを得ないというか。初手になくても黒マナは一応あるし、《創案の火》さえあれば色拘束は無視可能。0マナでだせる4マナのパーマネントということで、ケルーガのドロー枚数増加にも一役買います。
主にルールスサクリファイスや、《天頂の閃光》を無力化できることからジェスカイサイクリングに対しては有効足り得るサイドでしょう。
ちなみにジャイル―ダリアニに対しては無力です。納得いかん。
以上、こんな感じにイコリア版ファイアーズの特徴をまとめてみました。
もちろん一般ジェスカイプレイヤーである僕個人の考察ですんで、参考までに。
それでは最後に、ここんとこのTier上位どころとのマッチアップ相性について語って結びにしたいと思います。
【マッチアップ】
・対ヨ―リオンバントランプ・・・不利
メインは結構に不利です。ラスゴあり、ペス勝つあり、ハイドロイドありとアドバンテージでもサイズでも盤面でも勝負しにくく、こちらは序盤のマナ加速を咎めにくいのでアクション数でも上回られがち。特にニッサが致命的に重い。
速やかに火を置いてぶん回す以外では勝つのは難しいです。
サイド後は戦親分プランで迅速に殴り倒しましょう。ラスゴとかは都合よくカウンターする感じでお願いします。祈れ。
・対ルールスサイクリング・・・有利?
いかんせんサイクリング自体新しいデッキなんで、確証は持てませんが有利よりじゃないかなと思っています。
システムクリーチャーやトークンによる横並びをクラリオンやケンリスで否定できるのはサクリファイスデッキ相手と変わりませんし、メインにはカウンターもないので創案の火への干渉手段を持ちません。
ただチャンプブロックで時間稼がれたり、ショックイン連打や軽量クロックに対処できないでいると《天頂の閃光》圏内まで削られて負けるので土地の置き方に気を使ったり、打点よりも回復を優先したりする判断が重要になります。
・対ティムール再生・・・有利
パーミめいた動きをしてくるデッキなので不利に感じるかもですが、ラスゴがない他こちらのマスカンの量が明らかに多いので、個人的にはまあまあ有利なのではないかと思っています。高速で《荒野の再生》を貼られても諦めずにマスカン連打してみましょう。祈れ。
サイド後は戦親分と神秘の論争で都合よく殴り勝ちましょう。
《夜群れの伏兵》で親分が討ち取られないように、戦闘前に何かしらスペルを唱えてカウンターを使わせるようにプレイするとライフを詰めやすいですよ。
こんなとこでしょうか?
なんかご意見ご要望等あればTwitterなりコメ欄なり配信チャットなりでお気軽にお声がけいただければと思います。
また次回。
コメント