スタンダード環境考察記(11/16時点〔BFZ~KLD〕)
2016年11月20日 環境考察(スタンダード)今回の記事はここまでの大きな大会を中心に、環境の変遷と各デッキにまとめ次環境を見据えての適切なデッキ選択を行えるようにとの個人的な備忘録になります。
主観多々入りますので、よろしければ参考程度にお付き合いください。
①メタゲームの変遷
まずはここまでのメタゲーム形成の流れを振り返りましょう。
第一段階:SCGオープン インディアナポリス
環境傾向:アグロ
カラデシュ環境最初の大型大会。
top8のリスト全てに《密輸人の回転翼機》が4枚採用されていたことで話題になりました。このことから《稲妻織り》など「コプターを止められるカード」達にスポットがあたり、自身の採用率もさることながらサイドボードでコプター包囲網が敷かれるなど、とにかくコプターの存在感が凄まじかった大会でもあります。
スポイラー公開当初より有力だとされていた赤白機体の完成度を競うような側面もあったためか、優勝したChris VanMeterのレシピは非常に完成度が高いものでした。
このことは後のメタゲームにも大きな影響を与えています。
第二段階:プロツアーカラデシュ
環境傾向:コンボ
本命のプロツアー。SCGの段階でもある程度の注目を浴びていた、《霊気池の驚異》デッキが初めて台頭した大会となりました。
会場全体の傾向としては霊気池の他にもターボ巨像や赤緑エネルギーなど、多かれ少なかれコンボ要素のあるデッキを選択したプレイヤーが多くを占めました。
しかしそのコンボデッキの流行を読み切った青白系が上位卓を占め、ブレイクダウンでは30%以上の使用率を誇った霊気池はtop8に1名しか残れず。
SCGで早々に「環境最速ライン」が定義されたこと、コンボデッキの流行という二つの要素がメインからカウンターを積むような青系の中〜低速デッキへの追い風となったものと思われます。
八十岡氏の優勝ということもあり、国内での反響も大きな大会となりました。
第二.五段階:GPクアラルンプール、GPプロヴィデンス
環境傾向:ミッドレンジ
プロツアー直後のグランプリ。
コンボデッキを選択するリスクがプロツアーにして大きく露呈し、更にコントロールデッキ流行の兆しを受けて環境には「対応力」が求められるようになりました。
クアラルンプールではtop8の多くに青白フラッシュが入賞、続くプロヴィデンスではその青白フラッシュに強い黒緑昂揚が表彰台を独占するなど対応力の高いミッドレンジデッキが台頭。
短期間での環境の変化が非常に激しく、デッキ選択が難しい時期に入ります。
第三段階:MOPTQF
環境傾向:ミッドレンジ⇔コンボ
環境は青白フラッシュ←黒緑昂揚←霊気池という三すくみに。
直前のグランプリでの黒緑昂揚の活躍により、大会そのもののデッキ分布としては霊気池が勝ち組に収まりました。
しかし、優勝はその霊気池への対策を施した多色機体。これがアグロデッキの復権に繋がると、環境はますます混迷するかと予想されます。
②環境の主要なデッキタイプ
現時点の環境で有力視されているデッキタイプを主観的評価を交えつつ列挙します。
・黒緑昂揚
現状では環境有力候補筆頭。
シナジーを中心に戦うデッキでありながら、2色構成でかつサーチ&サルベージを多用するため安定感が高いです。スタンダードにはまともな墓地対策が存在しないのも追い風。
除去、クロック、横への展開力、PWとカードプールにも恵まれておりデッキパワーそのものが非常に高いといえるでしょう。
除去コントロール寄りの構成が一般的ですが、優秀な生物を多数擁する上にサーチに長けるためアグロから中速ビートまで幅広いカスタマイズ性も特徴のひとつ。環境的には下手に霊気池を対策しようとする中速アグロ~ミッドレンジを食えることが高い評価を得ていると思います。
一方で霊気池の驚異デッキとは絶望的なまでに相性が悪く、タッチ青などの工夫が求められます。
・霊気池の驚異
現環境最有力のコンボデッキ。
最速4ターン目にエルドラージ三柱クラスを踏み倒すことができるアンフェアっぷりが魅力で、《霊気池の驚異》の性質上インスタントタイミングでの置物破壊にもある程度耐性があるなど相手にするには非常に厄介です。
従来はウラモグ・エムラクールを踏み倒し先として複数枚積みつつ素出しも考慮したティムールカラーのマナランプハイブリッド型が主流でしたが、現在は黒緑昂揚にスペースを間借りしたコントロール型も増えてきています。
そのアンフェアぶりの代償として、コンボデッキらしくカウンターに対して非常に脆弱で、青系のコントロールデッキにはコンボオールイン型は完封されかねません。メインには打ち消しがなくともサイドから《否認》《儀礼的拒否》が飛んでくることは多いため、前述のような霊気池以外でも勝ち筋を用意できるデッキが選択されるようです。
非青系デッキに対しては理不尽なまでのマッチアップとなり安定感がでるため、今後も研究が続くアーキタイプとなりそうです。
・青白フラッシュ
インスタントタイミングでの対応力に主観を置いたアゾリウスカラーのミッドレンジ。
スピリットクリーチャーを主軸にしていますが、コプター・ギデオン・アヴァシンと全体的なダメージクロックは非常に高いため、青白ながら線の細さはあまり感じません。一方でカードアドバンテージをとるカードがほとんど入っておらず、長期戦そのものは得意としてはいません。
《呪文捕らえ》に《反射魔道士》とテンポアドバンテージの獲得に特化したようなカードが扱える反面、プレイングの難易度も高め。更に天敵ともいえるリリアナを擁し、ボード・カード両面のアドバンテージで戦う黒緑昂揚にはやや不利がつきます。
色の関係でサイドボードに柔軟性があり、プレイングの問題と共に課題をクリアできるのであればプロアクティブなデッキとしては筆頭候補に上がるでしょう。
・多色機体
プロツアーで登場して以来、ビークルアグロとしては赤白に代わり最もメジャーな構成となったデッキです。
基本的にマルドゥタッチ青で構成され、サイドに《儀礼的拒否》など霊気池の驚異デッキへのわかりやすい回答を搭載しています。
サイドに打ち消しを取ったことで、霊気池のみならずコントロールにもある程度の耐性を持つことに成功しており、色が増えたリスクを《耕作者の荷馬車》で補いつつクロックを補完するアプローチは非常に合理的といえるでしょう。
ある程度の耐性を得た、とはいうものの本質的な弱点はあまり変わっておらず機体を対処されると途端に線が細くなるという弱点はそのままです。
・赤緑エネルギー
アタルカレッドなどの流れを組む、コンボ要素のあるアグロデッキ。
《静電気式打撃体》ワンショットコンボにオールインしているわけではなく、エネルギーシナジーを持つ低マナ域のクリーチャーを主軸としているため普通にアグロデッキとして戦っても強いのが魅力。
《逆毛ハイドラ》、《顕在的防御》などで除去耐性とパンプアップをインスタントタイミングで付与できるため、即死を防ぐように窮屈な動きを相手に強要することができることがミッドレンジに高い抑止力を発揮します。
ワンショット要素の存在はコンボデッキ相手にも有効で、普通に素早く殴り倒すことも現実的。メタゲーム的にも好ポジションに位置するデッキです。
ただしクリーチャーヘイトな重除去コントロールは苦手であり、全体除去が致命的なのは通常のアグロデッキ同様です。
・赤黒アグロ
マッドネスを取り入れた攻撃的なラクドスアグロ。
《密輸入の回転翼機》のルーター能力をフル活用できるデッキの一つで、《癇しゃく》や《血の間の僧侶》など攻撃的なルーターで素早くダメージレースを制します。
《無許可の分解》や《ピア・ナラー》など赤系アグロらしく最後の一押しとなる攻め手も豊富に有しており、ミッドレンジの強い現環境でじわじわと勢力を強めているアーキタイプです。
弱点としては色の関係上アンタップインできる2色地形が少ないため、アグロでありながら序盤の動きに安定性がない点でしょう。
またマッドネスギミックを採用している都合上、コプターやボーマットなどディスカードエンジンのクリーチャーを狙い撃ちされると脆いのはビークル系アグロと同様の弱点といえます。
・ドレッジ
《秘蔵の縫合体》とゾンビクリーチャー&《屑鉄場のたかり屋》のリアニメイトエンジンに《老いたる深海鬼》を組み合わせた現出系を勝ち筋とした墓地利用デッキ。
墓地からの《コジレックの帰還》を最も有効活用できるデッキの一つで、墓地にパーツさえ落としてしまえば全体5点をばら撒きながらタイムワープ付きの瞬速5/6が《ウギンの聖域》から連続で登場するため通常の除去では対処が極めて困難。速い時はとことん速いため、理不尽な動きを押し付けることのできるわからん殺しぶりが最大のウリ。
グリクシスカラーがメジャーで、《安堵の再会》などのルーティングスペル軸や《査問長官》《終わりなき時計》などのパーマネント軸など墓地肥やしの方法自体が様々で選択肢も多くカスタマイズが効きやすい。
そして最大の弱点は安定感のなさ。上記パーツを墓地肥やしとドローで全て墓地と手札に揃えなければならないという「ブン回りの成立」の難しさがトーナメントでの使用をためらわせてしまうデッキだと思います。
③総括
現在の環境傾向としては
「霊気池の驚異」
↑
「青白フラッシュ」or「霊気池対策を施したアグロ」
↑
「黒緑昂揚」
といった形であり、デッキ選択の前提には「霊気池の驚異に勝てる」をクリアできるかが求められています。
しかし、ここをクリアしたとしても「黒緑昂揚とのロングゲームに勝てる」という非常に厳しいハードルがあるため、いわゆる「プロアクティブ」なデッキ選択をするのは難しい環境となっています。
さらにこの二つを乗り越えてなおプロツアーの大前提であった「環境最速クラスへの対応力」も最低限求められるなど、前環境のバントカンパニーをめぐる環境とは正反対のイタチごっこ状態です。
『まとめ』
Lv1.霊気池の驚異に安定して勝てること
Lv2.黒緑昂揚に勝てること
Lv3.ビークル系アグロへの最低限の耐性があること
④選択すべきデッキ
ではここまでを踏まえての個人的に今後有力だと思っているデッキについていくつか列挙します。
・青黒コントロール
目下の課題であった機体系デッキが「環境最速」を目指さず対応力を高めてくるアプローチをとり始めているため、古典的なディミーアカラーの重コントロールが成り立ちやすいと考えています。MOなどでは既に結果を出し始めているようで。
アグロ耐性抜群の《本質の摘出》や、置けば青白フラッシュに対し圧倒的に優位に立てる《最後の望み、リリアナ》など色拘束の強いカードを無理なくガン積みできるのはグリクシスにはない強みの一つ。
黒緑昂揚に対しても《虚空の粉砕》《ゲトの裏切り者、カリタス》がナチュラルに刺さる他、これまたガン積みした《奔流の機械巨人》からの《天才の片鱗》でロングゲームにも付き合えるだけのリソースを確保できます。エムラクールへの対策は必須となりますが…。
ハンデスとカウンターを擁しておりコンボデッキに対しての耐性も言わずもがな、今こそ青黒コン復権の時ではないでしょうか。
・《電招の塔》バーン(青赤スペル)
イゼットカラーの特権、カウンターバーン。環境がお互いの勝ち筋の潰しあいに傾きつつある現状、角度の違う攻め方・・・即ち本体を焼きに行くことは(赤黒アグロのように)理にかなっているといえるでしょう。
この色だと《熱病の幻視》軸という選択肢もありますが、青白フラッシュなどの攻め手のあるミッドレンジやアグロデッキなど手札を下手に増やして欲しくない相手の方が現環境では多いため塩を送りがちなのが難点。
電招の塔バーンならばデッキ自体は青赤コントロールの形をとっているため、メインからカウンターを積んでおり霊気池・ミッドレンジ共に耐性がありかつPWにもある程度対処可能です。
《氷の中の存在》や《霜の二ブリス》などさらに斜めからの角度をもったフィニッシャーも取り揃えており、サイド戦略でも現環境では優位に立てるのでは思います。
・赤緑エネルギー
メタ的に好ポジション、という話は前述した通りです。
相手への対処を迫るカードが多いため重コントロールさえ除けば全体的に環境のデッキに対して有利に立ち回れるでしょう。
サイドにカラデシュチャンドラやアーリンコード、ニッサなどを採用するアプローチは単純ながら強力なので比較的有力かと思われます。
色の関係上右手が問われるのは致し方ないところでしょうか。
今回の考察は以上です。
コメントはお気軽に。
ではまた次回。
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